親と関わりが持てない中学2年生の息子

※掲載している事例はこれまで受けた相談を元に創作した内容です

■相談内容

中学2年生の息子との関わりを持ちたいと思いますが、最近は話しかけても無視をするようになりました。
この前、無視はいけないと言ったのですが、関わりが持てない中で何かできることはあるのでしょうか。部屋にこもって出てこない日もあります。
学校は、先週、校長と担任との面談に妻が行ったのですが、妻によるとあまり親身に相談にのってくれなかったとのことです。

■内部のメンバー同士の意見交換(一部)
この内容は相談者には伝わっていません。「・」一つが1人のメンバーのコメントです。

・中2のこの時期は本格的に反抗期に突入したのではないかと思います。著しい体の成長に心がついていけずバランスを崩していると言われてますが、大人になる準備期間として考え、嵐の過ぎるのをじっと親はとにかく「待つ」ことが大事と思います。ただ、「待つ」にしても何も言わず放っておくのではなく、常に声をかけ、気にかけているということを伝えてほしいと思います。そういうときもおそらく無視のみならず、「うるさい」「うざい」「黙れ」とか言うと思いますが、同じ土俵には乗らないこと。でも、懲りずに声をかける必要があります。「何かできること」といったら、何と言われようが声をかけて見守ること、でしょうか。部屋にこもって出てこない、ということであってもノックしてドアの外から声をかけるとか、何かしらのアクションを示す、示し続けることが大事と思います。

・「無視する」も息子さんの一つの行動・反応だと思います。無視されると「関わりが持てない」と感じられるかもしれませんが、息子さんと「関わりを持ちたい」と思って、話しかけたり見守りを続けること自体が「関わり」の一歩だと思って、続けていただければと感じました。

・この時期にできることは、とにかく「味方であること」を言葉と行動で伝え続けることですね。出口がないトンネルはないと言われたことがあります。その時は、終わりが見えないように感じますが、トンネルの長さは人それぞれです。そのような言葉が支えともなります。

・会話ができず、自室にこもる日もあるのですね。自室は安全だけれども、家庭全体が安全とは感じていない可能性がありますね。自室に食事を運んでいないと良いのですが。以下の対応をしてみてはどうでしょうか。
①返答は期待せず声をかける
まずは挨拶はいかがでしょうか。お父様が仕事へ行く前は返答がなくても「おはよう、行ってきます」、帰宅したら「ただいま、今日は寒かったな」などであればお互いの負担はないと思いました。
②アイメッセージで伝える
話しかけても無視をするのは「どうせわかってもらえない」という思いの裏返しかもしれません。「無視はいけない」と伝えるよりも「お父さんは返事を返してもらいたかったな」などアイメッセージを使うようにするのをお勧めするのはいかがでしょうか。無視をされても、できるだけその行動を批判するのはやめ「心の中では〇〇って言ってるだろうな」とプラスの視点に立つようにしてもらえると良いと思いました。
③息子さんを知る努力をする
息子さんの好きなこと、好きなゲーム、得意なことは何か知っておくと、今後会話をする時に役立つと思います。
④プチメッセージを添える
自室に食事を運んでいる場合はメモに一行程度のメッセージを添えることで、お子さんの気持ちが和らいでリビングに出てくるようになったケースもありました。言葉で交わせない分、メッセージで思いを伝えてみるのも良いのではないでしょうか。その際は必ず肯定文で書くと良いと思います。
⑤学校との連携を取る
学校はお母さまだけでなく、お父さまの思いを知りたいとも考えているのではないでしょうか。一度相談者が学校へ出向かれ、息子さんのことについて相談するのもひとつの方法だと思います。学校が良いチームアプローチのメンバーになることができれば、息子さんの状況に応じて適応指導教室など、関係機関の紹介やスクールカウンセラーとの連携が取れると思います。

・保護者がお子さんに対する許容範囲を広げると、一時的に反抗や退行が強くなる表れが見られることが多いです。根気が必要なこだ
と思いますが、誤った行動に対しては怒るというよりも「○○してほしい」と冷静に伝えてもらえると良いと思います。

■回答メール

ご相談をありがとうございます。担当のワークライフコンサルタントのAと申します。
ご相談を拝見して、「息子さんと関わりが持てない中で何かできることはないか」「学校が奥様の相談に親身になって乗ってくれなかった」という気持ちをお持ちだと分かりました。学校を休んでいる子どもへの声掛けはタイミングやその話題が難しいですよね。それは、休んでいる息子さんも同じで、またはそれ以上に、ご両親に声をかけるのにエネルギーを使うものだとご理解ください。

親は子どもの将来が心配なあまり、どうしても必要以上に声をかけたり様子を見たりしてしまいます。
「息子さんに話しかけても無視するようになった」は、声をかけた時に、息子さんが「無視」していると捉えるのではなく、お父様の気持ちに応える「エネルギーが不足している。気力がない。」と受け止めてください。「部屋にこもって出てこない」のは、部屋の中が、息子さんの心に危険を及ぼさない守られた心的安全な場所になっているのだと想像します。
「自分の部屋から出ると、何か言われるのではないか」「何をしているのかと問い詰められるのではないか」そんな不安があると子どもは自分の部屋から出ないことがあります。
反対に、自分の部屋から出てリビングで過ごす時間が増えると家庭内が息子さんにとって心的に安全な場所となっています。息子さんにとって、家庭内の自分の部屋以外の場所も、今の自分の状況をそのまま受け入れてくれる、心的に安心安全な場所であることが必要です。

今回のご相談から、以下のことをご提案させていただきます。
●関わりが持てない中で出来ること
〈息子さんの話を聴く・話をさせる〉
・こちらが話をするのではなく、聴く姿勢で息子さんの話を聴いてください。自分の話を否定せず、遮らないで最後まで聴いてもらえることは、自分を認めてもらえることに繋がります。その際、息子さんがもっと話をしたくなるように、「そこのところをもう少し詳しく教えて」などと、息子さんがたくさん話ができるように質問したりするとよいでしょう。
息子さんの好きなことや興味を持っていることを話題にして、息子さんにたくさん話をさせ、聴き役に徹してください。自分の話を聴いてもらえる経験を積むことで、家庭が安心して自分の気持ちや考えを出せる場所となります。
家庭が安心して気持ちを出せる場所になることは、学校を休んでいる息子さんにとってエネルギー補給の場となります。
・どうしても意見したいことがあるときは、息子さんの話を否定することなく、「こういった考えもあるから参考にしてね。」と息子さんの考えに加えるまたは提案する形でご自分の意見を伝えられると良いでしょう。

〈無理に関わろうとしない〉
・息子さんは、部屋の中にいながら、部屋の外の様子を敏感に感じています。
父親が声をかけてくれたことを息子さんは敏感に感じています。反応はしなくても、声をかけてくれたことで「自分のことを気にしていてくれるのだ」と承認感や安心感を得ることができます。無視されたと思って寂しい気持ちになると思いますが、これまでのように息子さんに声をかけてください。

●学校が親身になってくれなかったと奥様が思うことについて
〈奥様がしたい話ができなかったのではないか〉
・相談に行った奥様が、ご自分の思うところの気持ちを十分に話できず、学校からの話を聞くほうが多かったのではないかと考えます。また、学校側が2人で、奥様が1人ではご自分の考えや気持ちを出しにくかったのではないかと想像します。

〈どの様な相談をしたかったのか〉
・奥様が、何をどのように学校に相談したかったのか、学校と面談することで学校に期待していたことは何なのか、奥
様の話をもう一度聞いてみられてはいかがでしょうか。奥様のお話を聞くことで気持ちや問題が整理できることもあります。

〈相談方法を選ぶ〉
・奥様のお話を聞かれて整理がついたら、再度、学校に面談希望をされてはいかがでしょうか。
その際、時間がつくれるようでしたら、奥様と揃って面談に行かれると学校側の面談時の様子を把握することができます。
双方の面談日程が合わないときは、息子さんの学習進度等学校生活全般、家庭での様子、など現在不安に思っていらっること、お尋ねになりたいことやご両親のお気持ちなどを文書にして学校へ提出し、回答してもらう方法もあります。
・面談時に奥様が学校の中で学担以外の相談しやすい先生、または、息子さんと関わってほしい先生がいれば、面談にその先生も一緒に入っていただくことも一つの方法です。
・また、スクールカウンセラーと奥様の面談設定を学校に希望して、スクールカウンセラーとの面談の中で学校へ伝えたいことなどを話す方法もあります。

●家庭は心のエネルギー補給の場です
・息子さんは食事、睡眠がとれているでしょうか。心のエネルギーをつくるのに、食事と睡眠は大切です。息子さんの好物は何でしょう。小さなことですが、自分の好きなメニューが献立に出ることで、心にエネルギーが不足している子どもは、「両親が自分のことを見ていてくれる、大事に思ってくれている、まだ見捨てられていない」とプラスに思うこともあるようです。
・学校に行っていないときの子どもは、学校に行くことができていないことが平気ではありません、心のどこかに「親に申し訳ない」という気持ちも持っているようです。学校に行けなくてつらいのは子どもである、ということを親が一番に理解していただき「学校を休んでいる自分を受け入れてくれている」と息子さんが感じることができるように、息子さんの一番の応援者でいて欲しいと願います。
・息子さんの登校へのエネルギーが何時溜まるかは、息子さんにしかわかりません。ご家族様は、息子さんのエネルギーが溜まるように生活を整え、心を支え、見守り、「息子さんの力を信じて待つ」だけだと考えます。

安心して話ができる場所と人ができ、心のエネルギーがたまって心が安定した時に子どもは自分から話をします。その時に、大人がしっかりと受け止めて話を聴くことで大人への信頼関係が生まれ、次に困難に出会ったときに自分から話ができる子どもに育ちます。今は、息子さんの話を聞き、一緒に笑って、息子さんが「家庭は安心できる場所。自分の気持ちを受けとめてくれる人がいる場所」と心の安全基地が家庭であり、両親であることを感じてもらうことではないでしょうか。
「無視はいけない」と思う気持ちは、まだ心にとめていただき、息子さんの心にエネルギーがたまったときに、機会を見て話をされるとよいと思います。

すでに多数の書籍に目を通されていると存じますが、筑波大学斎藤環先生をご紹介させていただきます。
筑波大学精神科医の斎藤環教授は、不登校生に長年携わって講演や本を出していらっしゃいます。斎藤先生が、「対面は暴力」と言われます。これは、学校にいけない子どもが顔を合わせて話をするのは「言葉ではない暴力」と比喩されている言葉です。しかし、「対面は」エネルギーの基にもなるといわれています。学校に行けない子どもに適度な対面が必要ということです。加えて「語らせる」ことも必要だといわれています。よろしければ参考にしていただけますと幸いです。
・斎藤環《今は休養が必要な時期 挽回のチャンスはいくらでもある》
http://manabi-subete.com/futoko/contents/interview.htm

最後に、思春期の子どもさんのことについて少し触れさせてください。
中学2年生の息子さんは、思春期の真っ最中です。
思春期の子どもは性ホルモンの働きで体と心の成長のバランスがとれず、様々な不安やストレスを抱えた結果、急に乱暴な言葉を使ったり、親との会話を嫌がったり、反抗的な態度をとることがあります。また、あるときは暴言を吐き反抗的な態度をったかと思うと急に甘えるときもあります。それらは決して特別な事ではなく、心的に親から離れて成長しようとして反抗したり、不安になって甘えて安心感を得ようとしているのです。他にも、この時期の子どもさんは、自分と他人を比べて「自分とは何か?自分は他の人と違うのではないか?」と自分探しを始める時期でもあります。 これらによって、今まで、親の言うことに素直に従い、当たり前に行ってきたことに関心や意欲がなくなることがあるのです。そうしたなかで、親は、安定した精神状態で子どもさんと接してほしいと考えます。
そのためには、ご自身が睡眠・食事をしっかりと取り、安定した気持ちで過ごされることをおすすめいたします。

回答は以上です。何かありましたらいつでもご相談ください。