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パフォーマンス(成果)=ポテンシャル(能力)−プロブレム(周辺問題)

能力発揮を阻害する周辺問題に注目する
思うように成長しない、能力が発揮できない原因に「周辺問題(本人の周辺にある諸問題)」が影響しています。これを取り除くことができれば、さらに生き生きと働くことができます。

■周辺問題とは

周辺問題は、本人の行動に影響を与え活躍を阻害する様々な事柄です。
大きくは、仕事とプライベートに別れます。例えば仕事で「成果が出ない」「意欲が上がらない」「落ち着きがない」「ミスが多い」「人間関係がうまくいかない」「嫌がらせをしていまう」などの問題を言います。また、プライベート(または個人的)では「体調不良」「家族間の軋轢」「生育歴」「金銭トラブル」「子育てや介護の問題」などを指します。
仕事の問題とプライベートの問題は密接に関係しており、それぞれがもう一方に影響を与えます。そして、仕事からプライベートまでの様々な問題が「周辺問題」として、本人の本来持つ能力を抑えてしまっているのです。
アスリートが、コンディションを整えないと本来の能力が出せず成績が上がらないことと同じように、働く人も、コンディションを整えることが、能力を最大限発揮する上で重要です。この、コンディションの低下に関わっているものが「周辺問題」です。
これまでは、問題を抱えていても職場では元気を装い、自力で解決することが不文律でした。また、仕事での問題は単に「仕事ができない」「困った人」のような評価をされがちでした。しかし、選抜されて採用された優秀な人材であったことは間違いありません。
期待されている能力が周辺問題により発揮できていないだけかもしれず、自力で解決する専門性が足りないだけかもしれないのです。
周辺問題への注目は、本人の活躍促進と組織の業績向上の道標になると言えます。

■周辺問題による生産性の低下

周辺問題が活躍を阻害する根拠として、2015年に経済産業省が発表している調査があります。
ここでは、WHOが提唱する「プレゼンティーズム」と「アブゼンティーズム」に関して、周辺問題との関連を示しています。プレゼンティーズムは、出社していても集中できない状態、アブセンティーズムは欠勤や早退遅刻など勤怠を指します。プレゼンティーズムはアブセンティーズムよりも生産性低下に影響すると言われています。
このグラフを見ると、3個程度の周辺問題を抱えるだけで、生産性を40%以上も下げることがわかります。
つまり、「落ち着きがない」「ミスが多い」「体調不良」「家族間の軋轢」「生育歴」「金銭トラブル」「子育てや介護の問題」などの問題は多くを抱える前に解決していくことが重要なのです。しかもこうした問題の多くは、なかなか表面化されません。人事や上司など自分を評価される先には、できるだけ見せたくないのと思うのが自然のことと思います。ただ、早めに対処しないと生産性が低い状態が長く続くことになります。またそれだけでなく、職場のリスクとして表面化してしまう恐れもあります。

■周辺問題による人的リスク

周辺問題は、個人に潜在しているうちから生産性を下げます。また、それが長く続くことで、個人では抱えきれなくなり様々なリスクとして表面化する可能性が出てきます。
その一つが、「職場の停滞リスク」です。その人の抱える周辺問題がメンバーに影響を与え、マネジメントが機能しなくなり徐々にチームとしての成果が上がりにくくなる状態です。もう一つが「離職リスク」。言葉の通り、優秀な人材が退職を考えてしまうような状態です。他には「健康リスク」も見逃せません。疾病の罹患や持病の悪化を招く可能性高くなり、特に問題が大きいと言われるメンタル不調も、こうした周辺問題の放置により悪化していくのです。発生率は低いと考えられますが、出現すると非常にリスクが高い現象として「コンプライアンスリスク」があります。時折目にする企業がらみのニュースにあるような、社会的評価を下げる事件や法令違反が懸念される状態も、こうした周辺問題の放置が原因となる場合が多々あります。

■周辺問題を発見する難しさ

多くの人は、周辺問題は自身の評価において負となると考え、できるだけ隠そうとします。こうしたことから、発見が難しくしばらく水面下に潜在したままとなります。そして、本人が辛さを訴えたときには既に表面化したリスクになっているのです。多くの相談先は、表面化した段階で対応していますが、それでは長期間本人は辛い状況が、組織は生産性の低下が続くことになり対応としては遅いと考えます。また、状況が悪化すればするほど解決も難しくなります。
さらに、こうした既存の相談先も、実際は利用率が低いことがわかっています。グラフは全労済が発表した勤労者の相談先を示したものですが、仕事、家族、お金についての悩みが出たときに、多くの人は家族か友人に相談する、または相談先がない状況です。見てわかるように、専門家への相談はほとんど活用されておらず、慰めてくれても解決策は提示しにくい家族や友人に相談することが精一杯の状況が見て取れます。
潜在する相談を早く見つけ専門家が対応できれば、本人も生き生き働き続けることができ生産性も上がるのですが、現状ではその状況には遠いことがわかります。