※掲載している事例はこれまで受けた相談を元に創作した内容です
■相談内容
今の上司との関係があまりうまくいっていなくて評価も低いです。前の上司とはそれなりに関係は良かったのですが、人間的相性なのか、今の上司と意思疎通が難しく感じます。
自分は必要な業績はあげていると思います。上司を選ぶこともできず規模が大きな会社ではないので異動のチャンスを待つのも難しいと思います。性格的には特別難しい人というのでないのかもしれませんが、こちらは忙しいのにあまり仕事をしているように感じませんし、より良い策を提案しても仕事を増やしたくない様子で、のれんに腕押し状態になりストレスがたまります。今の上司とうまく関係を築く方法を知りたいです。
■内部のメンバー同士の意見交換(一部)
この内容は相談者には伝わっていません。「・」一つが1人のメンバーのコメントです。
・現実的には、人間関係がうまくいく上司と巡り合う方が少ないでしょう。その事自体は相談者にできる事はほとんどないです。そうした事は「仕方ない」と割り切る方が、ストレスは減少すると思います。会社は事業を行う為の組織なのですから、上司を「人」として捉えるのではなく、組織の「一機関」として認識し、この「一機関」を機能させて事業を成功させる事に注力する事の方が建設的だと思います。そのような努力の末に成功を収めた場合、相談者の評価は一段と高まると思います。
・上司については、まさにハーバード大学のMBAなどでも取り上げられている「ボスマネジメント」の手法でしょう。
・上司が変わったことによって自分への評価が低くなった、意思疎通が難しくなった、思ったことや考えていることを伝えづらくなった、そういう経験は会社組織で働いていると誰もが持つことではあります。相談者様の場合は、
①前の上司とはそれなりに良い関係を築き、ご自身でも納得されている感じですので、時々前の上司に相談することもありかと思います。以前の部下が、相談に来てくれるとうれしく感じる上司は多いかと思います。
②限られた社員数とはいえ、ローテーションはあります。自分が異動するか、上司が異動するか、必ずその時期は来ますので、今の上司の下でも腐らずに自分の実力を蓄積することです。
③新しい上司が来てまだ間もないようでしたら、上司の仕事上の好みを、自分ができる範囲で取り入れる努力をしても良いかと思います。例えば、報告は午前中を好む、報告も結論だけを聞くとか、”どうしたらよいでしょうか?”ではなく”こうしたい”、という報告を好むとか、上司の嗜好を少し研究することも今後の勉強になるかと思います。
④新しい提案、自分の意見はどんどん上司にあげればよいです。部下の提案、意見を採用するかしないかは上司の判断ですが、部下が提案したこと、意見したことの事実は残ります。残していくことを大切にされることが良いと思います。
・上司は選べない。会社という組織で働く以上、いろいろな上司や部下、同僚と付き合っていかなくてはいけない。それをまず理解してもらうことが大切です。その前提に立ち、消極的にならず、前向きに積極的になることが大事です。今回の場合、上司と良好な関係を構築するために、以下のことを考えてはどうでしょうか。
①「良い提案をしても仕事を増やしたくない様子…」とありますが、良い提案は諦めず続けるべきです。上司がなかなか動いてくれないのであれば、上司に代わって何かできることがあればやります、という提案をしてみてはどうでしょうか。上司も助かるでしょうし、ご自身の成長にもつながります。
②自分を客観的にみることも大切です。そのためには、相談できる人に現状を話し、意見を聞いてみることが良いと思います。
例えば、前の上司や同僚などです。
③評価については、組織全体で客観的にみているはずなので、本来は妥当なところに落ち着くはずです。しかし、ご自身がおかしい、不当に低いと思われることが続くようであれば、直接上司との面談の際に、理由を確認する。あるいは、前の上司に相談してみても良いでしょう。
■回答メール
この度はWOLIに相談いただきありがとうございます。 ワークライフコンサルタントのAと申します。 現在の上司とうまく意思疎通ができていないと感じられており、そのためか業績は上げているのに思うような評価がされていない状況が続いていることが推察できました。
上司は忙しくても仕事を率先してこなしているようには見えず、こちらからの提案には「のれんに腕押し」で、手ごたえがないご様子とわかりました。噛み合わなさを感じながら業績を維持し、さらに新しい提案を考える状況には多大なエネルギーを必要としていることでしょう。
上司からの適切な反応は、モチベーションに関わります。今の状況を少しでも変えて、気持ちよく仕事が進められる環境をつくるために、何らかの手助けができればと考えております。
「今の上司とうまくやる方法」とありましたので、今回はその点に絞って、ボスマネジメントの考え方をご紹介します。
米国のビジネスパーソンには「上司は“顧客”と思え」という考え方が浸透しており、仕事ができる人ほど上司との関係づくりを合理的に捉え、いわゆるボスマネジメントと言われるスキルを身に付けています。
ボスマネジメントとは、組織における一般的なマネジメントの概念とは逆に、「部下が仕事の目的を達成するために上司を動かす」という考え方です。
部下が上司に対し能動的かつ戦略的に働き掛けることで、自らが仕事を進めやすいように上司をうまくコントロールすることや、相手から積極的な支援を引き出すためのコミュニケーション手法や環境づくりの技術を指します。
気の合う上司や仲間とだけ仕事ができる環境はあまりありません。逆にいうと、人間関係の労力が少ない組織では、成長する機会も少ないと言えるのかもしれません。
志向や価値観が異なる関係性のもとで仕事をすることで、それぞれの強みを組み合わせ、より成果を上げることも可能となります。
新たな一歩を生み出す機会になることを願い、ボスマネジメントの3つのポイントをお伝えいたします。既にご存知のこともあるかもしれませんが、もう一度、ご自身の日常行動を振り返る材料としていただければと思います。
1.上司を理解する
以下のような点を観察し、少しずつ機会をとらえて話を聞くなどして上司を理解しようとすることが最初の段階です。
・上司の組織上の目標、個人的な目標は何か
・上司へのプレッシャー、その上司の上司、他部門の上位者からのプレッシャーはどのようなものか
・上司の長所、盲点はどこか
・どのようなワークスタイルを好むか
・どのようにして情報を入手しているか(例えばリポート、正式な会議、電話など)
・対立を増長させるのか、それとも極力避けたがるのか
2.自分を理解する
上司と仕事をする上で、何が助けになり何が妨げになるのかを知ることで、仕事上の関係を実りあるものにすることが可能です。一方で、自分自身の強みや弱みについて、完全に客観視できる人はいないと言われており、客観的な自己理解のためには、できるだけ周囲からのフィードバックを受けやすくすること、またそのフィードバックを受け入れることが大切です。仕事においてご自身をわかってくれていると思う人に率直に尋ねるなど、自身のフィードバックを集める機会を増やしてください。関係が良かった前の上司に意見を聞くのもよいでしょう。
3.上司との関係構築
上記の二点を踏まえ、的確な「報・連・相」を行うことで信頼関係を積み重ねます。
よく観察することで、上司の好みの方法がわかります。口頭で質問しながら聞きたいのか、文章を読んで理解するタイプなのか、また文章でも箇条書きでポイントだけわかれば良いのか、詳細な経過も欲しいのか、上司によって理解しやすい報告スタイルは異なり、それに合わせるだけで関係を良好にする可能性があります。 なかなか動いてくれない上司には、上司に代わってできることはやっていく姿勢を見せることも、一つの方法かもしれません。また、その上司と良い関係を作れている同僚の関わり方を観察することで、 取り入れられる工夫が見つかることもあります。
一方で、どうしても受け入れられない相性というものもあります。しかし仕事である以上、相性を超えたところで、どのようなタイプでもベクトルを合わせられ、合理的なノウハウを持つことは、今後も様々な場面で有益なことと言えます。できることから行動してみてください。それでも問題が解決しない場合は、さらに具体的にご相談ください。